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組織を変える「仕掛け」 正解なき時代のリーダーシップとは(高間邦男)

組織のリーダーというものに切実に関心があるため、こんなタイトルの本を読んでみる。

組織を変える「仕掛け」 (光文社新書)組織を変える「仕掛け」 (光文社新書)
(2008/09/17)
高間邦男

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自分の言動が職場の士気を下げまくっていることに気づかないリーダー
自分では「目標を語っている」と思い込んでいるものの、何も語っていないリーダー
自分は人を動かす立場であって、自分が動く必要はないと考えているらしいリーダー
部下の言葉を受けとめるより先に、それをさえぎって自分の主張だけを通すリーダー
部下をひたすら罵倒し、存在を否定するような言動をするリーダー
自分の考えが部下や周囲に通じないのは「やつらの意識が低いからだ」と考えるリーダー

…と、つい、過去を振り返ってはナイナイづくしのリーダー像を思い描いてしまうのは、私がこれまで遭遇したろくでもない実例がいろいろとあるからだろう(嘆)。

▼もし、みなさんの周囲に、組織の雰囲気を元気で前向きなものに変え、高い業績を継続的に上げながら、人々の支持を集めているリーダーがいたら、その人の行動を思い出してみてください。きっと、そのリーダーの姿は、昔のリーダーのイメージとはちょっと違っているのではないでしょうか。

 そのリーダーは威張っておらず、気さくに人々に声をかけ、叱ることよりも褒めることのほうが多いでしょう。組織の中では、誰もが自由に意見をいえる、フラットでオープンなコミュニケーションが行われているでしょう。メンバーが主体的に考え、取り組める機会が数多く設けられ、失敗してもいいから挑戦することが推奨されているでしょう。組織の雰囲気は、自由で明るく楽しそうですが、それでいてメンバーは本気で仕事にコミットしていることが窺えます。(pp.8-9)

そうではないリーダーについての分析もある。

▼「現場に学ぶ」という言葉があります。まさに、変化は現場で起きているのです。にもかかわらず、トヨタの三現主義「現場・現物・現実」における「現場は宝の山、だから見に行く」という意識になりづらいのは、自分はわかっているという驕りや、自分の考えを否定したくないという意識のせいでしょうか。(p.29)

はやりの“ダイバーシティ”についても釘を刺してある。

▼同じことがダイバーシティでもいえます。
 「女性の活用」といい続けるのは、一見女性を尊重しているようですが、実は「女性」というラベルを貼って区別をしていることになります。あの人は外国人だとか、派遣社員だというのも同様で、インクルージョンせず、一体になることを妨げているわけです。

 組織がもっと力を発揮するには、このラベルを外し、同じ目的や理念に共感している仲間としてつながっている意識をもち、お互いに対等な一人の人間として接する必要があります。インクルージョンという言葉は、このことを表しています。

 女性の管理者数や高齢者や障害者の雇用率を考えることは、ダイバーシティの過渡期としては大切なことですが、いずれそういう数字が意識されなくなる状態が理想です。(pp.49-50)

トップダウンでもボトムアップでもない方法が紹介されている。

▼今日では「ホールシステム・アプローチ(a whole system's approach)」を行う組織が増えています。
 これは、ステークホルダーが一堂に会して話し合う方法です。影響関係のある当事者すべてが集まって話し合うと、複雑な問題や紛争を生成的に解決することができるという体験から生まれた手法です。この方法だと、トップダウンでもボトムアップでもなくなります。

 その場に全員がいて、互いに話をし、相手を話を聴いて、お互いの背景や想い、経験を共有し、みなで決めるので、誰もが尊重され、すべての人が主体性を感じることができます。(p.80)

それぞれの仕事を尊重することについては、著者の経験からこんな風に書かれている。

▼職場で「あれは私のやる仕事ではない」「あの仕事はあの人がやればいいのだ」という意識をもつと、価値のある仕事とない仕事の識別が生まれます。すると、どの仕事をしているかによって人を区別するようになります。仕事の種類や役割によって、尊重される人とされない人が出てきます。こういう雰囲気が、私は好きではありません。

 ヒューマンバリュー[著者が代表を務める会社]には、社長室も役員の椅子もありません。お客さまにお出ししたペットボトルやカップの後片づけやテーブルの雑巾掛けも、基本的にみなで行います。(p.141)

組織の一人ひとりの強みを引き出す、そもそも「強み」とはというこの部分にはハッとした。

強みというのは、他人からの評価です。ところが、多くの人が、「強みは何ですか」と聞かれると、自分が普段から心がけていることを答えてしまいがちです。これは、他人から自分の強みをきちんと聞いたことがないからです。(pp,151-152)

「自他非分離の場」、すなわち「自分と他の人々がまるで一つになったようなつながりを感じられる状態」の場をつくりだすには?

▼ストーリーを語りあい、コンテクストを共有すると、メンバーに内在する想いが響き合い、共感する場が生まれるのです。
 人はストーリーを聴くことで、物事の社会的な意味づけを構成し直します。自分で意味づけを変えることで、自らが変わっていくのです。(pp.182-183)

▼一般的に、組織がストーリーを広めるねらいは、理解してほしい事柄を物語にしたほうが、聞き手の関心を引きやすく、記憶に残りやすく、自由な解釈の余地があるので共感しやすいということでしょう。しかし、こういう理解でストーリーテリングを行っても、ストーリーのダウンローディングになり、自他非分離の場づくりや、知識の生成のエネルギーは湧き上がってきません。
 組織のすべての人にストーリーがあると考え、皆が自分のストーリーを語り、人のストーリーを聴き、受け止めたことを相手に伝え、お互いに喜び称え合う場が大切なのです。…(中略)…

 ストーリーは、このように語りつなぐことに価値があります。印刷物などの形に固めてしまうと、ストーリーがもつ本来のエネルギーが止まってしまいます。ストーリーとストーリーテリングは、異なる意味合いをもつのです。(pp.188-189)

これまで私はいくつかの職場を転々としてきたが、組織にとって風通しのよさ、言い換えれば情報共有はなによりも大切なことの一つと思える。
この本のしまいのほうに、情報共有について書かれていた。指標を「すること」ではなく、「達成したい状態」にするのがコツという。なるほどと思う。

▼例えば、「コミュニケーションによって情報共有をしたい」というねらいのアクションプランが「情報交換会を行う」だとすると、この指標は何になるでしょうか。
 よくあるのは「週に一回の情報交換会の開催」になります。これだと週一回開くことが目標になり、情報交換会が形骸化しても継続されてしまいます。
 そこで、情報共有ができている状態を測ることができる指標をつくります。
 例えば「全員が他のグループのプロジェクトの内容と進捗状況を知っている」とか「顧客からの電話に全員が出ることができる」「毎週、順番に自分の仕事内容を10分で紹介する」という指標にすれば、成果を検証することができます。(p.235)

とりあえず私がまずできそうなこととして、「達成したい状態」を指標にするのをやってみたい。
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北極のムーシカミーシカ(いぬいとみこ)

久しぶりに『ながいながいペンギンの話』を読みたかったのだが、最寄りの図書館に見当たらなかったので、『北極のムーシカミーシカ (フォア文庫愛蔵版)』を借りてきた。

『ながいながいペンギンの話』も双子ペンギンの話だったと思うが、『北極のムーシカミーシカ』も双子モノ。北極グマのふたごの物語。

きびしい自然のなかで、生きていくために他のいきものを食べること、食べ-食べられの関係にあるいきものどうしが友だちになること、その間のことが、かあさんグマの言葉でこう語られる。

▼「いつか、ミーシカにはいったけれど、きびしいこの北のはてのくにでは、たべものをさがして生きていくということが、なによりもたいせつなことだから、親たちは子どもに狩りをおしえます。にんげんはアザラシやクマをとることを、クマはアザラシやニシンをとることを、そしてまたアザラシは、ニシンやタラをとることを、じぶんの子どもにおしえるのです。でも、ひとのいのちをとることが、どんなに、とられるものにとって、おそろしいことか、親たちだって知っているのです。ね、ミーシカ、わたしだって、オーラ[ミーシカとさいしょに友だちになったアザラシの子ども]のなかまをむやみにころしたくはありませんよ。でも、北極グマのおきてでは、親グマは子どもにアザラシの狩りかたを、一どはおしえなくちゃなりません…わたしたちが生きていくために」(p.192)
ムーシカミーシカ『北極のムーシカミーシカ (フォア文庫愛蔵版)』

官製ワーキングプア 自治体の非正規雇用と民間委託(布施哲也)

今年出た似たタイトルの本に『官製ワーキングプアを生んだ公共サービス「改革」』がある。そっちは図書館に入っていたのだが、こっちは入っていなかった。この選書の理由は不明だが、近所の図書館に所蔵のないこっちの本をリクエストしたら、他市からの相互貸借本で届いた。

数年前に「指定管理者制度」というのが導入されて以来、公共施設の運営は、それまで地方公共団体や外郭団体(役所がほとんど出資してつくった財団など)しかできなかったのが、株式会社やNPOを含め、民間もオッケーということになった。

役所の直営であっても、多くの公共施設、そして役所の窓口、その他公共の仕事を担う職場では、いわゆる非正規職員(嘱託とか臨職とかパートとかアルバイトとか、呼び名や働く時間はいろいろだが、正規職員とかなりの待遇差がある)がたくさん働いている。

「指定管理者制度」を導入している自治体は多い。そこでも、直営の頃と同じかそれよりもっと悪い条件で働く非正規の人たちがたくさんいる。
この制度を導入するメリットは、「役所が運営するよりもサービスがよくなる=利用者にとってよくなる」ということと「運営にかかるお金を節約できる」ということの2点が主にあげられている。お金の節約=人件費の節約は、当然といえば当然のことなのかもしれない。

なんで役所のほうがサービスよくできないねん?と素朴にツッコミたい。
役所がやるより、ヨソの団体がやったほうがサービスがよくなり、お金も節約できる。それを認めてもいい。ただし、こうツッコミたい。
じゃ、その施設を公共のものとして維持する意味は?

公共のものに、なるべくお金をかけないのがヨイと考えるココロは何なのか?
公共のものがなるべく小さくてヨイというならば、究極的には役所はいらない。

役人とは、パブリック(公の)サーバント(しもべ)という名のとおり、公のためにサービスする人たちではないの? ヨソに預けたほうがサービスがよくなるならば、お役人たちは、このあと何のために仕事をするのか? 

そういう疑問がいつもふつふつと湧く。

この本には、私の住む自治体でも思いあたるような話がいろいろと載っている。

コミュニティ図書室の運営に指定管理者制度を取り入れるので、それまで10年ほど働いてきた非常勤の人たちが辞めてほしいと言われ、このまま働かせてほしいと訴えたときの話。

▼「図書室の運営委員会にも協力を求めましたが、みなさんあまり関心がなく、私たちの言うことより、市職員の説明を信じていました」
 利用者の理解を求めるのが大事と、市は、地域住民への説明会を開く。この種の説明会は、そこで住民の意見を聞いて、その意見を行政に生かすのではと思いがちだが、そんなことはない。市の当初の方針はあくまでも変えないで、反対意見のガス抜きの場となる。(pp.26-28)

民間委託された場合により一層ひどくなる人件費の削減。

▼民間委託後に残された問題は、民間企業が、そこで働く社員をどう処遇するかになる。
 はっきりしていることは、自治体が企業に支払う委託料は、それまでの市職員に支払われていた人件費の総額以下となることだ。遠い将来が、どうなるかは知りえようがないが、民間委託後の数年間は、民間委託をする目的が経費削減なのだから人件費は当然削減される。では、民間企業の社員の具体的な人件費はとなると、委託料に企業の利益分を上乗せするのだから、当然のことだが、これまで働いていた自治体職員、それも嘱託・臨時職員以下ということになる。そして、民間企業の社員の構成はというと、一部の基幹社員は正社員だが、ほとんどはパート社員で、なかには責任者もパート社員であったりする。(p.149)

公共施設の運営に指定管理者制度を導入し、役所が直営でやるのではなく、ヨソの団体や民間へ仕事をまかせる。それによって管理・運営の責任の所在があいまいになり、議会や市民のチェックも届きにくくなることは、役所にとってメリットなのだろうか?もしもそういうココロで指定管理者制度が導入されているとしたら、それこそ「公共施設って何?」である。

▼[施設の管理・運営の]第一義的責任は自治体にあるが、二義的な責任は、指定管理者が持つことになる。そのことは、第三者への損害賠償責任が生じた場合に自治体の責任のあり方が違ってくる。賠償責任を負う自治体は、その賠償を、そのまま指定管理者に求めることも可能となるからだ。…(中略)…
 もう一つの効果は、自治体議会との関係にある。議会が執行機関へのチェックが働く場合が前提となるが、施設の管理を指定管理者へ委託してしまうと、議会の直接的なチェックは不可能となることだ。自治体にとっても望むところとなる。その結果は、その施設で働く人の労働条件をはじめとした内部的部分は、すべて指定管理者の裁量にまかされることとなる。…(中略)…この指定管理者制度も一部事務組合と同じように、その自治体議会と市民の監視は緩くなる。(pp.153-155)

著者は清瀬市議会議員だそうである。
この本、かなり急いでつくられたようで、春に尼崎であった労働争議のことも載っている。

公の仕事とは何なのか?
公共施設は、どういうものなのか?
安ければいいのか?

少々読みづらい部分もあるし、どうもよくわからないところもあるが、収めた税金がどのように使われるのが望ましいのか、「みんなのための仕事」として役人にまかせることは何なのか、住んでいる者が自分たちでできることは何なのか…そんなことを考えながら読んだ。

自治体というコトバに入っている「自治」、これをどうやっていくかが問題なのだと思う。

官製ワーキングプア―自治体の非正規雇用と民間委託官製ワーキングプア―自治体の非正規雇用と民間委託
(2008/06)
布施 哲也

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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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