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ぼくもぼくのことすき(野田道子・文/太田朋・絵)

『ぼくもぼくのことすき』は、タイトルだけは知っていた。でも読んでいなかったので、内容は知らずにいた。

先日お会いしたハニー・ビー代表の八木みどりさんに、この本のことをうかがい早速図書館で借りてきた。

ぼくもぼくのことすきぼくもぼくのことすき
(2003/12)
野田 道子太田 朋

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障害のある子もない子も共に学び育つ教育をつづけてきた大阪府豊中市の小学校。この作品はその統合教育の現場を取材して、毎日新聞の連載「読み聞かせ童話」のための物語として書かれたもの。

転校生のユイが入った3年3組には、ダウン症のソウちゃんがいた。お兄ちゃんのクラスには自閉症のケンくんがいる。

同じクラスに、同じ学校に、“障害のある子”が共にいることで、どうやってみんなで一緒に授業を受けるか、どうやって一緒に行事に参加するか、子どもたちは知恵をしぼり、いろいろ考えることになる。同じクラスの仲間として、あれこれと工夫する。特別な時の特別な交流ではなく、ふだんのつきあいからうまれる育ちがある。

ユイのクラスでは、ソウちゃんと一緒に教室に入るにはどうしたらいいかと出しあった。

▼いままではあんまり人のことを考えなかった。ソウちゃんがいるといろいろ考えなくてはならない。でも、これって、そんなにいやなことじゃない。人のこと考えるって、少し自分がおとなになったみたいだもん。(p.31)

自治体によっては、“障害のある子”は、養護学級や養護学校にいくことになっていて、家の近所の学校に行けない場合がある。分けられることで、得るものもあるのかもしれないが、子どもたちが失うものも多いように思える。

分けられてしまうことが、“障害のある子”をもった親に「この子は不幸だ」という思いをさせ、絶望感さえ抱かせることがある。この子の将来はどうなるのか、どこかの施設へ入ることになるのか、この“障害”のために、この子の生きる場は限られたものになるのではないか…

人として、うまれた地域のなかで生きていく、それがアタリマエではない現状が今もある。
豊中市も小中学校では統合教育はすっかり定着したといっていいが、その先となるとおぼつかない。障害をもつ人の生きる場、働く場として親たちが次々とつくった作業所の数が、市内の小学校の数よりも多いところにもそれはあらわれている。

豊中市でも、みんな近所の学校へ行くのが最初からアタリマエだったわけではない。親たちの運動があり、教育委員会との交渉があり、学校の先生たちとの話し合いを積み重ねてきて、今のすがたがある。

「子どもは子どもの中で育つ」という。
分けられた子どもたちは、分けられた子どもたちの中で育つ。
分けられた向こう側のことを、たがいにほとんど知らないままに、知り合うことも、つきあうこともほとんどないままに育つ。…そう思うと、やはりこわい。

この本のタイトル『ぼくもぼくのことすき』は、お兄ちゃんのクラスのカイくんが、小学校卒業を前にした気持ちを書いた作文からとられている。ママが参観のときにカイくんが作文を読むところをみて、書きとってきた。

▼「わたし、聞いていてなみだが出そうになったわ。カイくんはその中でね、『ぼくもぼくのことすき』って書いてるの」
 ママが、書きとってきたカイくんの作文を読み上げた。

 ママすき パパすき
 あゆすき。(カイくんのおねえちゃん)
 ぼくもぼくのことすき。
 みんなすき。
 ともだちもすき。
 ありがとう。
 これからもよろしくおねがいします。
 みんないっしょに中学校いこうな。
             六年一組 田辺海樹


 パパは、聞きながらだんだんまじめな顔になっていった。
 それからゆっくりといった。
 「自分をすきになれるって、一番大切なことだ。すばらしいよ。カイくんしあわせなんだなあ」
(pp.118-119)

豊中の障害をもつ子をモデルに描いた作品には、『トモ、ぼくは元気です』というのもあって、こっちも久しぶりに読みたくなった。

トモ、ぼくは元気ですトモ、ぼくは元気です
(2006/08/24)
香坂 直

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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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