読んだり、書いたり、編んだり 

ゆとろぎ イスラームのゆたかな時間


ゆとろぎ イスラームのゆたかな時間
片倉もとこ
\1,680
岩波書店
2008年

私はイスラームのことが全くわかってないなー、ということがよく分かった本。

イスラームで労働をどう考えるか、という部分に興味を持った。

▽第四に、労働というものは、自由と対立するものだという考え方があります。労働は、人間であるゆえんである自由、人間の尊厳をそこなうものだというのです。自由という価値を、かれらは何よりも大切にします。(p.35)

「ディーセント・ワーク」という言葉があったり、尊厳ある働き方をと組合方面では言ってみたりすることもあるわけだが、そうかー、こういう考えもあるのかと、心に留める。


イスラームの人間観にも、興味をもった。

▽弱者救済は、イスラームの根本思想のひとつなのです。弱者の権利が確立しすぎていると思われることさえあります。こうした弱者救済の思想には、神の前にすべての人間は同じであるという平等主義、ストックよりもフローを重視し、ものをひとつのところによどませておくことを罪悪視する考え方などとも関連しているのですが、イスラームがもつ独特の人間認識でしょう。(p.76)

▽イスラームは、キリスト教と同じ一神教であり、兄弟分の宗教といえるような間柄でありながら、キリスト教とはちがった人間認識をもっています。人間は、本来弱いものなのだとあっさり認めています。「人間性弱説」とでもいいましょうか。
 人間が弱い存在であることをいさぎよく認める。したがって、人間がその弱さゆえに、ついいいかげんな行動をしてしまったり、誘惑に負けやすくなるような状況を作らないように腐心するのです。男女隔離やヴェールの着用、禁酒なども、この人間認識ゆえといえます。不特定多数の男女が肌をみせて接触していると、まちがいがおこりやすいから、長い衣服やヴェールをつける。弱い人間に酒を飲ませると、何をしでかすかわからないから、トラブルがおこる前に禁酒にしておいたほうがよい。社会の秩序を保つには、このほうがよいと考えるのです。
 人間の弱さをみとめるイスラームにおいては、弱い者を邪魔者あつかいにするような考え方は出てきません。むしろ、先に述べたような弱者の権利が考えられることになります。(pp.77-78)

それから砂漠の話。
植物について、“植物人間”というような植物イメージがもたれているが、実は違う!という話に似て、砂漠にも(とくに日本では)なぜか不毛感をもっているが、それも違うよう。

▽砂漠は、不毛の土地として、否定的なイメージが一般にも植えつけられてしまっています。砂をかむような…、砂のような女、「東京砂漠」…、みな悪い意味あいをこめてつかわれています。日本ではとくにそうです。
 …[中略]…
 広い砂漠を抱えているアラビアの国々には、「アル・フンドゥク・ラムリーヤ」(砂の宿)という宿屋があちこちに見られます。カナダやアメリカには「サンドマン・ホテル」(砂男のホテル)とよばれるホテルが、けっこうたくさんあります。サンドマン、「素直と子」というのは、夜、眠らない子のところにやってきて、目に砂をかけて眠らせるという妖精のことで、ブラームスの子守歌にもなっています。「サンドマン・ホテル」は、「眠りの精の宿」といったいいイメージをもって、客をよびよせています。
 …[中略]…
 砂漠はけっして、ただの白紙ではありません。緑陰とまでいわずとも、日陰に対する考え方には相当なものがあります。人間も住み、動物や植物もそれなりに生の豊かさをもち、さまざまなことを語りかけてくれます。「過疎もいいもんだ。『佳疎』だよ」とか、「産業型時間にそって、毎日を切り刻むように生きることもあるまい」とか、「パイを大きくすることより、小さいパイをどうわけるかを考えたらどうか」とか…。
 砂漠の詩が、のどかに、おおらかに流れているのです。安易に砂漠の「開発」とか「緑化」を考えるべきではないのかもしれません。(pp.160-162)


タイトルの「ゆとろぎ」は、「ゆとり」+「くつろぎ」-「りくつ」からできた著者の造語。
イスラームの「ラーハ」はこういうものらしい。

ゆるりとよい本であった。

MOVED ムーヴド


MOVED ムーヴド
谷村志穂
\1,575
実業之日本社
2008年

谷村志穂はこんな小説も書いてたのかーと読み終わって思う。
地味な表紙で、なんの話を書いているかもあまり分かってないまま、3章に派遣社員のことが書かれているらしいというので、業務上の役に立つかもという下心でとりあえず3章を読んでみたら、これがおもしろかったので、1章から順に読んだ。

平安寿子の小説にも似て、けっこうよかった。

主人公の同僚・河田恵がオモロイ。

(8月29日読了)

明日への伝言 乳がんと闘う女性たち


明日への伝言 乳がんと闘う女性たち
大山和栄
\777
秋田書店
2004年

自身が乳がんを患ったマンガ家による、乳がんにかかった女性を描いたマンガ。
女性のがんの中で一番多いという乳がん。
本も読んだことがあるけれど、マンガという表現で、ああそういうことかと分かったところもあった。

(8月29日読了)

フォト・リテラシー 報道写真と読む倫理


フォト・リテラシー 報道写真と読む倫理
今橋映子
\819
中公新書
2008年

いろいろと書評が出ていたので、てっきり図書館では順番待ちかと思ったら、あいていたので借りてきた。

「写真は真実か?」から始まるこの本、かなりおもしろかった。

ドキュメンタリーと同じで、写真も、そこには撮影者の“編集”が必ず入る。
でも、どこかで「写真=ホンマのこと」と思っている。
人間の眼は、見たいものしか見ないけれど、カメラのレンズはあるものをそのままうつすから…と思っている。

そういう、写真に対して持っている自分の“素朴な”思い込みを、手にとってじっくり見た、という感じの本。

(8月28日読了)

わが指のオーケストラ3、4



わが指のオーケストラ 3
山本 おさむ
\770
秋田書店
1992年

わが指のオーケストラ 4
山本おさむ
\770
秋田書店
1993年

全国的に口話主義がのしていくなか、吾一の母親が口話教育にとびつく。「一度でいいから、子どもにお父さん、お母さんと呼ばれてみたい」「可能性があるならかけてみたい」そんな親心が、聴こえない吾一にとって判じ物のような口話の訓練に追い込む。
よみとれるわずかな口型をたよりに、吾一は教師が何を言っているか必死で想像する。吾一の言動に一喜一憂する教師と母親。

吾一は、怒りがこみあげてくる。

吾一をはじめ、口話至上教育にとびついた親たちの子どもは、明けても暮れても、読唇と発音の訓練に追い立てられる。

手話は否定され、手話をつかうことで口話教育に害が出ると親も教師も子どもの手を縛る。「私は手まねをしました」と首から札をかけさせる。

言葉をうばい、言葉を強制するときにおこなわれることは、いつも似ているのだと思う。かつて、方言札がかけさせられたように。

(8月27日読了)

金色の野辺に唄う


金色の野辺に唄う
あさのあつこ
\1,470
小学館
2008年

「金色(こんじき)の野辺に唄う」という書き下ろしの表題作を含む連作集。人間関係がちょっと込み入っているのと、登場人物の名前が覚えきれず、何度も目次の次にある家系図を見ながら読む。

淡々と静かな物語であった。

表紙があざやかだが、それに負けないくらい、話のあちこちにもあざやかな色があり、印象に残る。

(8月27日読了)

アメリカのろう文化


アメリカのろう文化
シャーマン・ウィルコックス(編)
鈴木清史、酒井信雄、太田憲男(訳)
\3,780
明石書店
2001年

USAでは1989年に出版された本。
ASL(=American Sign Language)が分からないと、正確には分からないところもあったが、Deafとdeafの話や、口話法の教育のことや、バイリンガル教育のことなど、日本の話と通じることもいろいろあった。

たくさんの章のなかで、合いの手のようにベン・バーハンのテキストが入っている。
調べてみたら、ベン・バーハンはギャローデット大学でろう文化を講義している人だそうだ。

各章のタイトル
1 ろう社会とろう者の文化(キャロル・パドン)
2 生きた心地のしなかった夜(ベン・バーハン)
3 ろうコミュニティの内側(バーバラ・カナペル)
4 「目の見える人」からの覚え書き(ベン・バーハン)
5 音楽がなくても踊ることができるのですか(シャニー・マウ)
6 われわれの世界でもあるのだし(ベン・バーハン)
7 異なる次元 アメリカ手話と英語の文化(ウィリアム・ストコー)
8 私の将来、私たち自身(ベン・バーハン)
9 ろう者には面白くても、聴者には面白くない(スーザン・D・ラザフォード)
10 もしかりにアレグザンダー・グレアム・ベルの思いどおりになっていたら・・・・(ベン・バーハン)
11 汽車 出た ごめん アメリカ手話における社交会話のエチケット(ステファニ・ホール)
12 言語上の少数派としてのろう児(ベーダ・R・チャロウ、ロニー・B・ウイルバー)
13 トータル・コミュニケーション(TC) まったくのお笑い種(ベン・バーハン)
14 二言語・二文化による英語教育 二人の聴者とひとりのろう者が共同でいかにして英語を教えるか(トム・ハンフリー、ベット・マーティン、テリー・コーイ)
15 学校でスタック ろう教育の教室における意味と文化(シャーマン・ウィルコックス)
16 もしイエスさまと話せなかったら、どうして天国へ行けるの 既成教育組織対ろう社会(ジェームス・ウッドワード)
17 誰が主流に入りたがっているのか(ベン・バーハン)
18 沈黙の文化を突破する(シャーマン・ウィルコックス)
19 戦いはまだ終わっていない(ベン・バーハン)

15章「学校でスタック」に引用されていた「ろう者の教育」という絵。ろう画家ベッティ・ミラーによるこの絵には、こんな文字が書き込まれている。


GOD
MADE ME DEAF
BUT THEY
WANT ME LEARN
TALK TALK
HEAR HEAR . . . . . LIKE HEARIES

NORMAL?
ME TRY HARD
EQUAL NORMAL
UNTIL ME FREAK
. . . FAIL . .
W H Y . . .?

(p.231、「ろう者の教育」ベッティ・G・ミラー、1971)

えりなの青い空


えりなの青い空
あさのあつこ(作)
こみねゆら(絵)
\1,300
毎日新聞社
2004年

この本が文庫になるというのを新刊案内で見て、どんな本かなと図書館で借りてきてみた。
晴れた日には、新聞紙をもって学校に行き、昼休みに、中庭で、あるいは木の下で、新聞を敷いて、靴と靴下をぬいで、寝っころがるのが好きなえりな(小5)の話。

著者の娘が、実際に新聞を敷いて寝っころがっていたらしい。

気持ちよさそうである。
私も晴れた日は新聞もって、どっかで寝っころがってみるかな。

(8月24日読了)

自分をさがそ。 多様なセクシュアリティを生きる


自分をさがそ。 多様なセクシュアリティを生きる
杉山貴士
\1,470
新日本出版社
2008年

たいへん真面目な本。
「中学生から」ということで、漢字にはやたらルビが振ってある。
ルビが振ってあっても、中学生にはこの表現わかりにくいんじゃないか、ちょっと難しくないかーと思ったところがあちこち。

授業の副読本として、話のよくわかった大人のフォロー付きなら、いいかもなと思う。
間違っても「男だろ!」「とか「女の子でしょ!」と言うような大人にはフォローされたくない。

(8月24日読了)

ショッキングピンク


ショッキングピンク
大道珠貴
\1,575
講談社
2007年

えっちえろえろ小説が7篇。

仕事でくたびれて帰ってきてから、ぴらぴらと読む。
いろんな小説を書く人であるなア、という感想。

(8月23日読了)

ひさしぶりにさようなら


ひさしぶりにさようなら
大道珠貴
\1,470
講談社
2003年

『後ろ向きで歩こう』の作者の別の本をなにか借りてみようと思い、

「無軌道な大家族で育った怠惰な女が結婚・出産。夫は家に寄りつかず、子供は放任。それでも幸せわが家は安泰-。無敵の家族小説。」

という紹介に興味をもって、借りてみた。


平安寿子が書くヘンな家族とは、また別の意味で、おかしな家族が書かれている。
ヘンなのが世代間連鎖する?

変な話と思いながら読んでしまった。

(8月22日読了)

反貧困 「すべり台社会」からの脱出


反貧困 「すべり台社会」からの脱出
湯浅誠
\777
岩波新書
2008年

貧困に陥っても死なないように、生きられるように、そのために社会保障というセーフティネットがあるハズだが、何重かに張ってあるはずのネットはどれも同じあたりに穴ができていて、どこかのネットで引っかかって救われるハズが、落ちてしまえば真っ逆さまにすべり落ちてしまう、そういう状況になっているのだと著者は書く。

そのすべり台社会をどうにか変えていこうという話も書いてある。

今のままでいいんスよ、と言っていた人が、なぜ「今のままでいい」と言っていたのか。
湯浅さんのいう「“溜め”のなさ」「自分自身からの排除」とは、こういうことだろうと思う。

(8月22日読了)
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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