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魚住直子『リ・セット』講談社

魚住直子『リ・セット』講談社/2003年3月25日第一刷



▽三帆の晩がきた。「元気でね」とひとことだけ書き、分量をふやすためにバラの花束を描いたががうまくいかずにブロッコリーのようになってしまった。(109ページ)



描いたがが→描いたが (「が」を1つ削除)

棟方志功の肉筆画(II)

▽人の生きることのなんたるか知る人には、わたしの言葉の薄っぺらさが透けて見えたに違いない。後悔しかないわたしの過去の日々の中でも、もっとも大きなものは、正しさという単純な基準を安易に求めすぎるあまりに、他人や家族にやさしくなかったことに尽きる。その過ちを、がんによって思い知らされた。…
 …正しさは狭量なのだ、いつも。
 人間ひとりの抱え込んでいる時間と経験に比して、言葉で紡ぎ出した正しさは狭量で、人の可能性を刈り取る役割をしかはたさない。議論は虚しい。…
 がんという病はわたし自身の弱さとだらしなさ、そして脆さをおしえてくれた。
 正しさで生きられぬわたし自身を、思い知らせてくれた。(384ページ)

棟方志功の肉筆画

 柳原和子『百万回の永訣』

▽「痴呆という病名でひとくくりにしないでください。わたしたちは一人一人まったく別個の人間なのです」
 「痴呆の人には何もできない、という社会の思いこみが痴呆の人の力を奪っています。痴呆になると心が空っぽになるというのは壮大な嘘です。わたしたちが社会の一員でないとするならばわたしは誰なのでしょうか? わたしのケア・パートナーになってください。わたしをあなたたちの仲間(社会)に入れてください」(206ページ)アルツハイマーの診断を受けて九年目のクリスティーンのことば。

▽在宅で死なせたい、病院は死ぬところではない、というわたしの希望が父の苦しみを増幅させ、姉の疲労も限界をこえるものにしているのだ、と気づく。
 ………だが、いやだ。
 病院の孤独な夜を家族は知らない。
 死を迎える人の孤独を、生者は知らない。死者は沈黙を守って、消滅してゆく。(369ページ)

▽「あなたの闘病記を途中まで読んでいました。でも、あるときから読むのをやめてしまった。僕だけしか言わないだろうから、言おうと思います。
 柵原さん、あなたはほんとうに幸福な患者です。あなたをめぐって動いてきた医師たちは、同じ医師からみてもほんとうにすばらしい志と礼を持ち、最高の技術と能力を尽くしている。ある意味で特別な待遇を受けている、と僕には見える。たとえばインフォームド・コンセントです。彼らがあなたにしていたような、何時間もかけて一人の患者の疑問と議論につき合っていたら、現在の医療現場でどうなると思いますか? あなたが受けてきた医療をすべての患者が受けようと思ったら、現在の医療制度と医師の境遇ではほとんどの病院と、そして医師の心身が壊れます。それをはたしてあなたは理解しているのだろうか?」
 十分すぎるほど、理解している、とわたしは答えた。(381ページ)

あつ

 朝顔4つ咲く。昨日の晩に届いたゲラを、朝のうちこりこりと校正。すませてから、図書館経由で父ちゃんちへ行く。魚住直子の『非・バランス』と『リ・セット』が届いていたので、それもって行く。行きのモノレールのなかで、『非・バランス』を7割ほど読む。

 あついので、モノレールを降りて、バスに乗って、郵便局に寄ってから父ちゃんちへ。父ちゃんと一緒に昼ご飯。クルマを手放した父ちゃんの生活は、つい遠くまで歩いて買い物に行き、重いものを背負って帰るような、クルマがあったときの行動範囲を、主に徒歩だけでこなしている状態になっているらしい。まだバランスわるいかんじもするが、まあぼちぼちか。

 妹2号と夕方、父ちゃんちで落ち合う約束だったので、昼を食べたあとも、うだうだ滞在。父ちゃんが最近コース変更したネットの接続状況を見て、だいぶ速くなったのに驚いた。そのあと、『非・バランス』の続きを読んでしまって、続けて『リ・セット』も読んでしまったので、もう1冊カバンに入れてた『女ひとり生きここに平和を希う 昭和戦争独身女性の証言』というどくふれん(独身婦人連盟)がらみの本を読む。

 妹2号が来て、クルマでウチまで。同居人の里から届いた新米を妹たちにお裾分け、それを取りにきてもらう。お米と、絵本原画展のおみやげ(一筆箋と絵はがき)を渡す。

 『女ひとり生きここに平和を希う』を読んでしまい、図書館へ行く。読み終わった3冊を返したら、リクエスト本があまりきてなかったので、めずらしく貸出冊数に空きがあり、ぶらぶらと書架をみてあるく。魚住直子のほかの本がないかと検索したら、児童書が1冊あったので、その『バスとロケット』を読む。

 本のカバーの袖に、魚住直子が読者にむけて数行書いている。

▽小学校に入学するとき、ドキドキしましたか?
 あたらしいところに入るのって、ちょっぴり、こわいですよね。
 それは子どもだけじゃなく、おとなもいっしょです。
 「がんばれ、がんばれ」っていわれるより、
 「きみの気もち、わかるよ」っていわれたほうが、がんばれる。
 これも、子どもも、おとなも、いっしょです。

 閉館までにこの本をさらさらと読んでしまって、それから手話に行く。
 帰って、晩ご飯はカレー。同居人は夜介護。
 
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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