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一瞬と永遠と(萩尾望都)

一瞬と永遠と一瞬と永遠と
(2011/06)
萩尾望都

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萩尾望都の本はマンガ以外では『思い出を切りぬくとき』を前に読んだ。『ガラスの家族』をオススメしてくれた元同僚さんは、私はこれはちょっと…と言ってたけど、読んでみたくて借りてきた。収録されているのは、もう30年あまり前の文章から最近のものまで、本の解説やエッセイ。

小学校5・6年のときの担任・高尾先生のことを書いた「先生の住所録」がよかった。鎌倉に行ったとき、突然、小学校のときに高尾先生から受けた授業を思い出して、先生に手紙を書く。返事をいただいた萩尾望都は、お会いしたいと思いながら、両親との間にこだわりがあって、なかなか九州には帰らなかった。そして、いつか先生に会いにいこうと思いながら出した年賀状の返礼が奥様から届いて、先生が亡くなられたことを知る。

もと同級生と一緒に先生のお宅を訪れて、大学ノートを二冊貼り合わせてつくってある、使い込んだ古い先生の住所録を見せてもらう。その晩は実家に泊まって、「こんなことでもなければ私はまだ家に帰ることはなかったのだなと思うと、最後まで先生にお世話をかけてしまった気がした」という萩尾。ニコニコしたお仏壇の写真のお顔を思い出して泣けてくる。
私にも、ときどき便りをする、かつての先生が何人かいるが、亡くなられて、もう便りを出せなくなった先生も何人かいる。それでも、ふと、ああ今、先生に手紙を書きたいと思うことがある。


▼初めての風景が見慣れたものになる前に、初めて聞く音楽が耳慣れたものになる前に、出会いの感動はしみしみ身体にしみこんで、やがてそれは心臓の近くで結晶になる。思い出すということは、その結晶を思い出すということだから、今見るナナカマドより記憶の中のナナカマドの方がもっと美しかったりする。やがてナナカマドになれると。(p.30、「地球の半分の雪」)

▼都会では、デパートではお金がなきゃいけない。学校では、頭が良くなきゃいけない。
 セレブな場所ではセンスがよくなきゃ、いけない。自分で自分を締め付けて生きている。
 でも、アフリカに来て、動物を見る。毎日見る。ホテルに泊まっていても、サファリーカーに乗ってはいても、草原と風が、皮膚から身体に染みていく。
 私は空。私は風。私は大地。私は生き物。同じ生き物。許された、生き物。(p.35、「私は生き物。同じ生き物。」)

(10/11了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行。最新は98号

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第120回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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